東京で、会話の入口をくぐった日
これは「外と接続する」ための小さな実験ログの2本目です。 前回は群馬で“場所”に出て、NETSUGENさんのワーキングスペースで、仕事の集中と「会話の入口」が両立しそうだと感じました。準備不足で質問ひとつできなかったものの、セミナーにも参加してみました。
やっぱり、人に会いに行くのって緊張しませんか? 僕に関して言うと、答えは YES です。引きこもりがちな性格とも繋がっていて、これは今後の課題のひとつ。
今回は、その入口を本当にくぐる番でした。 先日、東京で人に会ってきました。
お会いしたのは、ほぼ引退されているものの、世の中に大きな影響を与える会社を創業し、多くの著書を通して知識を広めてきた方(以下、先生)。 そして、その場を整えてくださった秘書の方(以下、秘書さん)です。
実際に面会したお二人は、笑顔が多く、空気がやわらかく感じました。 過去に東京で人付き合いに摩耗した経験のある自分にとって、これは稀有な感触でした。
個人的な経験則ですが、東京は人が多いぶん関係も増え、時間にシビアになりやすい。結果として、余裕が削られてしまう場面も多い気がします。 僕は以前、その流れの中で人付き合いが億劫になった時期がありました。
今回は、面会前から秘書さんとメールでやり取りしていました。 その時点で、丁寧さと気遣いが行き届いている印象が強く、文面はどこか手紙のようでした。僕は勝手に「良い先生みたいだな」と思っていました。
人に優しくするのは、気分じゃなくて技術だ。
心で思っていることはもちろん大事です。 ただ、「丁寧さ」は心持ちだけでなく、やり取りの経験や設計に支えられている面もある。そんな気配がしました。
いろんな記憶が鮮明なうちに、今回の出来事から得た気づきや学びを記しておこうと思います。 大きく分けると「面会までの道中」「面会」「帰路」の3つで得るものがありました。
(東京駅にあった不思議な時計) 
1. 面会までの道中で考えたこと
道中、どんな挨拶をすべきか迷っていました。特に難しいのは、「自分は何者か」を短く、正確に言うこと。
そのとき、ふとこう思いました。
新しい人に会うことは、自然と自分を振り返る機会になる。つまり、人と会うこと自体が、自己理解を促す装置になっているのかもしれない。
僕の中で「自己理解」というと、静かな場所で内面に深く潜るイメージがありました。 瞑想とか禅とか、そういう言葉から連想される感じです。
でも、もっと活動的なものでいい。 「人と会う」という外部との接触によって、半強制的に自己理解が進む面もあるのではないか。道中はそんなことを考えていました。
これは先日NETSUGENのセミナーでも、ブランディング・組織開発コンサルタントの児玉さんが似た趣旨のことを仰っていた記憶があり、僕だけに当てはまる話でもないと思います。
つまるところ、僕は自己理解がまだ足りない。 だから今後、こういう機会に恵まれたら、もっと積極的に足を運ぼうと思っています。
外に出る練習は、結局のところ「外とつながる練習」でもあるのだと。
2. 面会で得た気づき
2-1. 話し方の課題
結論から言うと、今の自分に必要なのは 「小さく、根本から話す」 ことでした。
僕は緊張すると言葉が早口になりがちで、話が枝分かれして情報量が増えます。 結果として、的を射ない言葉が混ざり、伝達効率が落ちる。
もう少し具体的に言うと、緊張・怒り・悲しみのように感情が揺れているときに、早口になりやすいです。 落ち着いているときはゆったり話せるので、プライベートでは相談を受けたり、話しかけられたりすることも多い。
では、なぜ落ち着かないのか。
おそらく、情報量が増えるときは、そもそも自分が根本を理解できていないことが多い。 理解が未整理なまま話してしまい、話しながら理解をまとめようとしている。そんな感覚があります。
話が散るとき、理解が散っている。
だから僕は、話す前に「幹だけ」を言えるようにする。 枝はあとでいい。まずは幹。
営業の世界では、トークスクリプトで前提を整えてから数をこなし、会話のバリエーションと理解力を上げていきます。 僕にも「自己紹介のトークスクリプト」と、それを試す場が必要だと思いました。
2-2. 地方活性化に必要な“構図”
地方の活性化に不可欠なものについて話す中で、先生は「官・民・学」が必要だと言いました。 この循環が大きなエネルギーになる、と。
細部はあえて語られませんでしたが、僕はこう捉えました。
- 民が主導して動き
- 官がその活動を支え
- 学が「参加したい」と思える土壌をつくる
先生は、僕の地元に近いある地域で実際に活性化に取り組んできた方でもあり、実践について「自分も頑張った」と短く言っていました。 実践してきた人の言葉は重い。僕もこの構図は、たしかに必要だと感じました。
僕の立ち位置は「民」だと思います。
民の役割は、学生が参加したくなる事業、官が支えたくなる事業をつくること。 地方活性化とは、その“流れ”を設計し、回し続けることなのではないか。
渋沢栄一さんの『論語と算盤』が示すように、民だけの利益だけを追求する事業は、雇用や税収として貢献できても、この構図を前提にすると下落を押し返すほどの大きな力にはなりにくいのかもしれない。そんなことも思いました。
2-3. 本の選び方(倹約の具体例)
実業家でもあり、好奇心旺盛な読書家でもある先生に、本の選び方を聞いてみました。 僕も本が好きで、その縁もあっての質問でした。
- 前提として本が好き
- 図書館に行く
- 手に取って10ページほど読む
- 面白ければ読み進める
- どうしても手元に置きたければ本屋で買う
難しいことはしていない。でも、図書館に通う人は今、そこまで多くない気がしています。 図書館に行っても同世代はいても、子ども連れが多く、普段から利用している印象はあまりありません。
実は僕自身も最近になって、図書館を利活用しようとし始めました。 司書の方から聞いたりホームページを見たりすると、リクエスト制度や取り寄せ制度はとても便利だと感じます。 ただ、それまで、そんなものがあると知らなかった。
僕は幼い頃、母が「本を読み聞かせる活動」(正式な活動名は忘れてしまいました)をしていたので、図書館にはよく行っていたほうだと思います。 それでも、習慣として図書館を利用する発想がなかった。
ちなみに先生の読書の内訳は「図書館が約70%、購入が約30%」らしいです。
先生は著書で「倹約とケチの違い」にも触れていたそうですが、この図書館活用はまさに倹約なのでしょう。 これはほとんどの人がすぐ真似できる。僕もさっそく実践しています。
2-4. 人としての向き合い方に圧倒された
とても印象深かったのは、先生の「人としての向き合い方」でした。
- 目線が外れない
- 体調面で言葉が出にくいときも、前のめりに筆談で伝えてくださる
- 人を「人脈」や「価値」で見ている感じがしない(質問してもそう感じた)
- 好奇心をもって相手と正対しているのが伝わる
- 握手が、年齢を感じさせないほど力強い(祖父とほぼ同い年)
僕はこんなふうに、人と正対できているだろうか。
比べることが目的ではないとしても、僕はできていない側に傾いている気がする。
目が外れないというのは、一瞬一瞬を無駄にせず、相手と向き合う覚悟の表れなのだと思いました。
2-5. 「パワフルさ」は技術であり、姿勢でもある
本をプレゼントしていただけるというので、おすすめを尋ねたら、なんとまだ世に出ていない新しい著書にサインまでいただきました。 (発行日を指差して、サプライズが成功したような表情をされていた)
でも僕は正直、あの状態でよく本を書けたなと思った。 本を書くのにかなりハンディキャップがある状態だと、簡単に察せたからです。もちろん周囲の支えもあるでしょう。それでも、300ページ以上の重厚な本を形にする精神力や原動力はどこから来るのだろう。
僕は人に会うのも、セミナーで質問するのも緊張する。 未熟さの証拠だと思う。
でも地方の活性化のような大きなことをやるなら、その程度の緊張はパンくずのようなものなのだろう。 官や学を巻き込むなら、なおさらだ。
この「緊張に飲まれないパワフルさ」は、早急に鍛えるべきだと思いました。
3. 帰路で整理した「次の一歩」
前回の実験ログでは「次は勉強会に参加してみる」と書きました。 今回はもう少し具体的に落としておきます。外に出るだけではなく、外と接続するために。
3-1. 自分が何者かを知り、伝える
まず必要なのは「自分が何者か」を理解し、伝えられること。 セルフブランディングと言ってもいい。
言葉だけでなく、表情や見た目、物腰にも出る。磨くべきだと思う。
当面は、自己紹介を「15秒版」の一文に圧縮する。 枝を切って幹だけ残す。面会で痛感した「小さく、根本から話す」を、ここで鍛える。
3-2. もっと図書館を使う
本はタダではないし、ネット検索だけで必要な知識が手に入るとは限らない。
図書館を活用して、さまざまな本に触れ、軽く読んで選ぶ。 この方法は有効だと思う。
週1でもいいから、生活に組み込む。 知識の入口を増やすのは、外と接続するための燃料を増やすことでもある。
3-3. もっと速く、もっと活動的に
多くの知識や経験を持つ先生も、ある目標の達成に17年かかったという。 大きなことには10年、20年単位の時間がかかるのだろう。地方の活性化は大きなテーマだ。昔お世話になった会社で取り組んでいたが、その会社もまだ大きな影響は起こせていない。
だからこそ、もっと活動的に、多動的になる必要がある。
月1回は、誰かに会いに行くか、勉強会に出るか。 「外と接続する予定」をスケジュールに固定する。緊張は消せないが、緊張ごと前進する練習ならできる。
4. 今後の付き合い方
面会後、「またいつでも」「今後ともよろしく」という趣旨の言葉をいただきました。 これを単なるリップサービスと捉えるのは無粋だと思う。そういう人たちではないと感じたからです。
僕は多くを与えられ、感謝を返した。そして今日もまた与えられた。
今後は、先生の本を読み、今日のきっかけを通して成し遂げたこと、考えたこと、その“結果”を添えて感謝を伝えていきたい。 それ以外は、自分の人生に集中して、活動的に取り組む。
本を読むことも、何かを成し遂げることも、誰かに言われたからではない。 僕がそう望んでいる。10年、20年かけて続けたいことなのだから。
外に出るのは、移動じゃない。接続の練習だ。